第9話――のどかな“買い物デート”が、霧の中で反転する
黄泉のツガイの第9話は、デラ(タデラ一族)がユルを現代の街へ連れ出す“お出かけ回”だった。電車に乗り、デパートでマネキンや下着に目を丸くするユル。その傍らで、何か衝撃的なものに出くわすたびに目をカッと見開くツガイのヒダリ――海外の視聴者がまず夢中になったのは、この“強いのにどこか抜けている”ヒダリの表情だった。「虫を見つけた瞬間の猫みたい」「ギャップ萌えのツガイ」というコメントが次々と賛同を集めた。
笑いどころも多い。寝不足のせいでヒダリとミギが“見えて”しまい、自分が幻覚を見ていると思い込むレジ係の店員には、「気の毒すぎる」「完全にコベニ属性」と同情が殺到。アサが兄との集合写真から、しれっとデラを消し去る“ブラコン”ぶりも健在で、和やかな空気が続いた。だが、その空気は終盤で一変する。霧の中に立ちはだかったのは、手足が異様に長く、巨大な笑顔を貼り付けた二体の異形のツガイ。「人の死に方が急に残酷になる、まさに荒川印」――視聴者は、日常から地獄へ一気に振り切れるトーンの落差に戦慄した。
“足長手長”――日本の妖怪が、荒川弘の世界で異形のツガイになる
終盤に登場した二体の不気味なツガイの名は、“手長(てなが)”と“足長(あしなが)”。海外ファンの一部はすぐにこれを調べ上げ、「実在する日本の妖怪だ」と興奮気味に共有した。足長手長(あしながてなが)は、日本の民間伝承に伝わる一対の妖怪で、足長人(あしながじん)は極端に長い脚を、手長人(てながじん)は極端に長い腕を持つ。海を渡る漁の際、足長が手長を背負い、手長が長い腕で魚を獲るという、二体で一組の存在として描かれてきた。“二体で一つ”という性質は、まさに本作の「ツガイ」の概念そのものであり、荒川弘がこの妖怪をモチーフに選んだ意図がうかがえる。これまで登場したツガイの多くが愛嬌のある姿だっただけに、この土着の妖怪を下敷きにした“純粋に恐ろしい”デザインの落差が、第9話の不穏さを際立たせた。
本作の原作者・荒川弘は、『鋼の錬金術師』で世界的な知名度を得た漫画家である。海外ファンが本作を語る際に必ず持ち出すのが、この前作との比較だ。第9話のコメント欄でも「10〜15年前に出ていれば名作扱いだったはず」という賛辞と、「いや、FMAだって最初の8話だけで判断したら“まあまあ”止まりだった。物語とテーマが終盤に向けて積み上がってこそ巨人になる。今はまだ世界観づくりの段階だ」という冷静な擁護がぶつかり合った。派手な“オーラ”や即効性のある展開が好まれる風潮の中で、数話かけて静かに伏線と世界観を積み上げる本作の作りそのものが、海外で一つの論点になっている。
以下、第9話に寄せられた海外の反応を訳して紹介する。
海外の反応 (23件)
ヒダリが電車に乗るとか、何か衝撃的なものに出くわした時に見せる、あのカッと見開いた目。何度見ても飽きない。あいつ、めちゃくちゃ強いのに、同時にどこか抜けてるんだよな。
>>1 俺には、虫を見つけた瞬間の猫みたいに見える。そこがまた最高なんだ。
>>1 まさに“ギャップ萌え”のツガイ。
>>1 あの表情、ほんと好き。驚いてるのに、それを認めたくなくて、でも結局ポーカーフェイスを保ちきれてない感じなんだよな。
日常回(スライス・オブ・ライフ)は終わり。さあ、命を刈り取る回の始まりだ。 それにしてもガブが自分のツガイに中二全開の名前を付けてるの、あいつなら確かにやるわって納得しかない。
>>5 そうでもしないと、性別逆転版エドワード(エルリック)の名に恥じるからな。
>>5 影森一族、また裏の顔を出し始めたな。笑 どうやらデラは、世界の狭間の異界で立ち往生してた連中を何人か始末したらしい。
あのレジの女の子が気の毒すぎる。ただでさえ寝不足で最低賃金の仕事なのに、今度は自分が幻覚を見てると思い込んじゃってるんだぞ……。
>>8 あのレジ係、属性が完全に“コベニ”だわ。
>>8 理屈の上では、ツガイが見えてる時点で、彼女もツガイと契約を結べるはずなんだよな。
今日のことがあったら、ユルはもう“ふんどし派”じゃなくて“パンツ派”になるだろうな……。
>>11 これ、今日だけで“ふんどし vs パンツ論争”を始めた2本目のアニメだぞ。
いやー、ここ数話とはガラッと空気が変わったな。
>>13 あのツガイ、マジで不気味すぎる。この作品の人の死に方がやたら残酷なの、いまだに慣れない……。あの絵柄やコメディの空気に、まるで合ってないんだよ。
>>14 そこが荒川作品の一番の魅力なんだよ、俺にとっては。空気が0から100まで一気に振り切れるところがな。
ユルが現代社会に見せるリアクション、何度見ても飽きない。 ユルのもう一つ好きなところは、現代の常識には疎くても、決してバカじゃないってこと。下着を見た瞬間、かつて山に登ってきて自分を殺そうとした賊が“現代から来た人間だった”と一瞬で結びつけたんだ。
知らない人のために言っておくと、“ガブ”は日本語で「噛みつく」音を表す擬音だ。彼女のツガイが“口”だってことに掛けた駄洒落なんだよ。
調べてみたら、足長手長(あしながてなが)って日本の民間伝承に実在する妖怪なんだな。これはなかなか粋だと思った。
ハグレのあのフェイント、怒る人もいそうだけど、俺は普通に笑った。新登場のツガイは不気味な手足とデカい笑顔――まさに荒川印だわ。
>>19 逆に言えば、一族を継ぐのを嫌がって、ただ漫画を描くことに情熱を注ぎたいっていうのは、すごく筋が通ってる。
この作品の評価が(海外大手の評価サイトで)7.98なの、信じられない。10〜15年前に放送されてたら、FMA(鋼の錬金術師)と肩を並べてトップ10入りしてたはずだ。今のアニメファンは“オーラ”だの異世界スロップ(粗製濫造の異世界もの)だのに退化しすぎ。数話かけて溜めを作る作品は“退屈”だと切られる。寂しい時代だよ。
>>21 リゼロを“異世界スロップ”呼ばわりするのは違うと思うぞ。それに、みんなの集中力が落ちてるのは事実かもしれないけど、原因はそこじゃない。あの評価サイトが偏ってるだけの話だ。
FMAB(鋼の錬金術師)だって、最初の8話だけで判断したら“まあまあ”止まりだったはずだ。物語とテーマが終盤に向けて繋がり、積み上がっていく――その過程こそが、あの作品を“巨人”たらしめた。黄泉のツガイは今はまだ、ほとんどが設定の提示と世界観づくりの段階なんだよ。
翻訳元■